乳酸脱水素酵素 (LDH) 酵素活性の実習に

専門分野の研究に加えて、大学の管理・運用などの事務的な仕事も担いながら、学生の授業を行う大学教員に向けて、医学部や理学部などの学生実習で用いられる乳酸脱水素酵素活性測定を、お受け取り後すぐに使えるセットにしました。

乳酸脱水素酵素は、グルコースからエネルギーを獲得する反応過程において働く酵素で、急な激しい運動などにより酸素の供給が十分でない時に、ピルビン酸から乳酸を生成する酸化還元反応を触媒します。
またこの酵素は、細胞がダメージを受けると血液中に流れ出るため、肝炎・心筋梗塞・悪性リンパ腫・白血病などの診断の指標として用いられています。




LDHは、高度好熱菌 Thermus thermophilus、ヒト( M型、H型 )、ウサギ、ニワトリ、ウシからお選びいただけます。

このキットには、大阪大学理学研究科名誉教授 倉光成紀 先生監修による実用的マニュアルが付属し、学生実習書としてご活用いただけます。

学生実習や理科教材として、簡便かつ自由度の高い探究的な実験体験にぜひご活用ください。

*本キットによる解析には分光光度計・マイクロピペット (およびチップ) を必要とします。

キットの使い方

I.溶液の調製

  1. 各チューブの蓋に付着している粉や溶液を遠心などの操作により落とす。
  2. 1.5 mL チューブの乳酸脱水素酵素 LDH (350 μM) を全量 (20 μL) とり、50 mL チューブのLDH 希釈溶液 (20 mL) に加え、優しく混合し、350 nM 乳酸脱水素酵素溶液とする。
  3. 50 mL チューブのピルビン酸ナトリウム (10 mM) について、付属の 1.5 mL チューブを使用し、純水で希釈することで 0.4、1、2、4、10 mM ピルビン酸ナトリウム溶液を作製する。
  4. 50 mL チューブの NADH の粉に、NADH 溶解液* (30 mL) 全量を加えて溶かし、3 mM NADH 溶液とする。

   *弱アルカリ性の溶液である。NADHは弱アルカリで安定であるが酸性では不安定であり
    (NAD+はその逆)、溶液の長期保存はできない。

II. 乳酸脱水素酵素 LDH による反応の初速度の測定

  1. 分光光度計を立ち上げ、340 nm の吸光度の時間変化測定が行える状態にする。
  2. 次の 4 つの溶液を恒温槽に立てて 25℃ にしておく。次に以下に示す液量をセルに入れる。

   500 mM リン酸カリウム緩衝液 (pH 7.0)             0.2 mL

   3 mM NADH                                0.1 mL

   ピルビン酸ナトリウム (0.4, 1, 2, 4, または 10 mM)     0.2 mL

   純水                       1.4 mL

  1. セルを分光光度計のセルホルダーに入れ、セル内の溶液が 25℃ になるのを待つ。その間に、酵素を入れない時の 340 nm の吸光度の時間変化を記録する。
  2. セルを取り出し、350 nM 乳酸脱水素酵素溶液 0.1 mL をセルに加える。パラフィルムでセルの口を押えて速やかに 4~5 回反転してよく混合する。時間をおかずに直ちに分光器のセルホルダーに挿入し、340 nm の吸光度の時間変化を記録する。
  3. 同じ操作を複数のピルビン酸濃度で行う。
  4. 酵素反応の阻害実験を行う場合は、引き続き、オキサミン酸を加えた条件で、同様の操作を行う。

   500 mM リン酸カリウム緩衝液 (pH 7.0)               0.2 mL

   3 mM NADH                                 0.1 mL

   ピルビン酸ナトリウム (0.4, 1, 2, 4, または 10 mM)     0.2 mL

   1 mM オキサミン酸ナトリウム溶液          0.2 mL

   純水                       1.2 mL

III. データ解析

  1. 各々の反応プロファイル (吸光度の時間変化) において、反応開始後に直線的に吸光度が変化している領域について直線を引き、その傾きを求める。例えば、1分間に、340 nm の吸光度(A340)が 0.01 変化する場合には、1秒間あたりの吸光度変化は ΔA340 = 0.01/60 。
  2. 1 cm のセルを用いた場合、酵素反応によって 1 M の NADH が NAD+ に変化した時には 340 nm の吸光度が 6,220 変化することが分かっている。これにより、上記1で求めた傾き (1 秒間あたりの吸光度変化) を 1 秒間あたりの NADH の減少量に換算する。これが反応速度 v である。
  3. 縦軸に v、横軸にピルビン酸濃度をとってグラフを描く。
  4. 回帰分析が行える場合には、想定した反応スキームから導いた v を表す式 (標準的なミカエリスメンテン式の場合は v = Vmax[S]/([S] + Km) をフィッティングすることで、反応速度論的パラメータを求める。回帰分析が行えない場合、縦軸に 1/v、横軸に 1/ピルビン酸濃度をプロットする。標準的なミカエリスメンテン式の場合、このプロットは直線となり、縦軸との交点が 1/ Vmax、傾きが Vmax / Km を表す。これを利用して VmaxKm を求める。
  5. Vmax = kcat [E]0 より、kcat を計算して、1秒間に酵素が何回働くかを計算する。

以下のようなグラフを作ることができます。


( 1 )
基質(ピルビン酸)の濃度を変えて LDH の反応速度を測定した。
ピルビン酸濃度が高くなるにつれ、反応速度が大きくなることが分かる。
反応開始直後からの傾きが一定である領域から、各条件での反応速度(初速度)を求めた。

( 2 )
( 1 )で求めた初速度を、基質(ピルビン酸)濃度に対してプロットした。
阻害剤であるオキサミン酸が有る場合の速度は、オキサミン酸が無い場合の速度に比べて小さくなっていた。コンピュータープログラムを使用して、ミカエリスメンテン式をフィッティングすることで Km, kcat を求めた。

( 3 )
1 / 初速度を 1 / 基質(ピルビン酸)濃度に対してプロットした(両逆数プロット)。
オキサミン酸が有る場合の直線とオキサミン酸が無い場合の直線が y 軸で交わったことから、オキサミン酸は Vmax を変化させず Km を変化させることが分かった。
よって、オキサミン酸は競合阻害により LDH を阻害すると考えられた。

キット内容
乳酸脱水素酵素 (LDH) 溶液・NADH・NADH 保存用溶液・リン酸カリウム緩衝液・ピルビン酸ナトリウム・阻害剤 (オキサミン酸ナトリウム)・マニュアル

価格 ¥20,000 (税込)
容量 200 回測定分

⇒ 乳酸脱水素酵素は以下よりお選びください。
・高度好熱菌 Thermus thermophilus
 製品番号 EL002-01-01

・ヒトH型 (Heart and brain)   
 製品番号 EL002-01-02H

・ヒトM型 (Muscle and liver)  
 製品番号 EL002-01-02M

・ウサギ (Muscle)       
 製品番号 EL002-01-03

・ニワトリ (Heart)         
 製品番号 EL002-01-04

・ウシ (Heart)
 製品番号 EL002-01-05


*必要に応じて、マニュアル電子版も提供いたします

研究・教育以外の目的にはご使用いただけません.

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