【販売予定】
品名:リゾチーム結晶化キット (品番:EL009-01)
本キットは、ニワトリ卵白由来のタンパク質「リゾチーム」の結晶化を自分の手で体験できる教育・研究支援キットです。
タンパク質の結晶化が初めての方でもすぐに始められるよう、結晶が作れる条件に絞って準備をしています。そのため、高校や大学での実習でもすぐにお使いいただけます。

なぜタンパク質を結晶にするのでしょうか?
◆タンパク質の構造を見るため
タンパク質は、DNAの設計図に従って作られた、生体の機能を担う分子です。その立体構造がわかれば、どのように働くのか、どんな相手と結合するか、が明らかになります。
その立体構造を見るための手段として、結晶化したタンパク質にX線を当ててその結晶の格子から計算して構造を見ることができる、「X線結晶構造解析*」という方法があります。その方法を用いるためには、分子が規則正しく並んだ結晶を作ることが重要になります。
タンパク質を結晶化することで、ナノスケールの「かたち」を知ることができるのです。
*弊社製品に、X線結晶構造解析を簡易的に体感できる「光の回折実験キット」がございます。ぜひ組み合わせてお使いください。
◆創薬とタンパク質結晶
病気の原因となる酵素や受容体の構造を結晶から解き明かせば、そこにピタリとはまる薬を設計できます。
これは「構造ベース創薬(Structure-Based Drug Design)」と呼ばれ、多くの医薬品の開発に使われています。
実際、COVID-19やがん治療薬の開発にもタンパク質結晶構造が使われています。
リゾチームとは?
リゾチームは、涙や唾液、卵白などに含まれる抗菌性タンパク質です。細菌の細胞壁を分解することで殺菌作用を示し、私たちの体を守る自然免疫の一部として知られています。
また、その構造は非常に安定しており結晶化が容易なため、酵素として世界で初めてX線結晶構造解析が解かれたタンパク質として知られています。これは1965年、デイヴィッド・フィリップスらによって報告されました1。
一方、世界で最初に立体構造が解かれたタンパク質はミオグロビンで、1958年にジョン・ケンドリューらが解析に成功し2、続いて1960年にマックス・ペルーツらがヘモグロビンの構造を解明しました3。これらの成果は、その後のタンパク質研究の大きな礎となりました。
1 Blake, C.C., Koenig, D.F., Mair, G.A., North, A.C., Phillips, D.C., and Sarma, V.R. (1965)
Structure of hen egg-white lysozyme. A three-dimensional Fourier synthesis at 2 Angstrom resolution.
Nature 206, 757-761
DOI https://doi.org/10.1038/206757a0
2 Kendrew, J.C., Bodo, G., Dintzis, H.M., Parrish, R.G., Wyckoff, H., and Phillips, D.C. (1958)
A three-dimensional model of the myoglobin molecule obtained by x-ray analysis.
Nature 181, 662-666
DOI https://doi.org/10.1038/181662a0
3 Perutz, M.F., Rossmann, M.G., Cullis, A.F., Muirhead, H., Will, G., and North, A.C. (1960)
Structure of haemoglobin: a three-dimensional Fourier synthesis at 5.5-A. resolution, obtained by X-ray analysis.
Nature 185, 416-422
DOI https://doi.org/10.1038/185416a0
◆現在、リゾチームは次のような分野で活用されています。
・構造生物学の教材(結晶化・構造解析の入門に最適)
・創薬研究のモデルタンパク質
・食品添加物や点眼薬としての抗菌剤
タンパク質の結晶化について
結晶化とは、タンパク質分子が規則正しく並んで固まる現象です。これは、塩や砂糖が結晶を作るのと似ていますが、タンパク質の場合は遥かに繊細です。
◆溶解度曲線と結晶化ゾーン
タンパク質の結晶化は、溶解度(溶けやすさ)と濃度の関係を理解することから始まります。
以下のような「結晶化相図」が基本になります。

本キットでは、リゾチームが結晶化領域に達するように穏やかに水分を拡散させて結晶化する「蒸気拡散法」の原理を用います。
Sitting Drop法

静置温度・ドロップの大きさと比率・緩衝液の組み合わせを変えるだけで、様々な大きさの結晶をつくることもできます。
条件を組み合わせてどのような結晶が作れるか、ぜひ試してみてください。
キットの内容

価格:¥7,000 (税抜)
準備いただくもの
・マイクロピペット
・チップ
・超純水
・顕微鏡 (簡易型のマイクロレンズでも可)
・冷蔵庫 (4 ℃インキュベート用)